立場が違っても、気骨のある人の本は、頭から毛嫌いせずに読んでみるべきだとおもいます。
こちらの気骨が本物なら、へんに感化されることもないでしょう。
たとえば、フランスの歴史人口学者、エマニュエル・トッドさんは、「日本は核武装すべきだ」など、時々とんでもないことを口走ったりする人ですが、文明論そのものは角度が新しくて面白い。
きのうは福島県議選応援のため、東京ー福島間を往復。そのときの「新幹線読書」は、トッドさんの新刊「アラブ革命はなぜ起きたのか」(藤原書店)でした。
チュニジアやエジプトの民衆革命はどうして起きたのか。
世界中の国々もマスコミも、アラブ世界では宗教性から独裁は永遠につづくと考えていたのに、トッドさんは、早くからアラブ世界への近代性の浸透を指摘し、一連の民衆革命を予見していました。「イスラム社会は、イスラム教では説明できない」という主張は斬新です。
トッドさんの分析手法は、おもに識字率と出生率。
「帝国以降」(02年)「文明の接近」(08年)では、世界の常識がみんな右をむいているときに、まったく違う見方を提起しました。
とくに、昨年出版された「自由貿易は民主主義を滅ぼす」(藤原書店)は、TPP参加が焦点になっているいま、自由貿易がほんとうに経済発展をつくりだすものなのか、硬直化した見方を変えるという点でも、読んでみる価値があります。