絵・金井英明 |
きのう福島駅の書店でみつけ、帰りの新幹線で読んだのは、ルポライター石井光太さんの最新刊「遺体」(新潮社)。
この八か月、何度も三陸の被災地に出かけ、まちの復興や事業者の再スタートをどうすすめるか、現地の方々からお話をうかがいました。
そのなかには、家族を亡くした方もたくさんおられましたが、どなたもその死について、多くを語ろうとされませんでした。
目の前の現実が、悲しんでいる余裕さえ与えなかった。
生き延びた者の使命は、前向きにがんばることだと、必死にこらえておられたのでしょう。
死者・行方不明者の数は、約2万人。しかし、その死の実相はほとんど伝えられていません。
亡くなられた方々のご遺体が、どのように発見され、どのように弔われたか。
本書は、釜石市の現場取材にもとづく壮絶な記録です。
数字が、数字だけで通りすぎていってはならない。
一人ひとりの死の重み、その実感が、これからの復興をかんがえる基礎にあらねばならない。
本書を読んで、あらためてそうおもいました。