2012年10月31日水曜日

乱読のすすめ70-ナショナリズムは「アホの壁」

 












   先日、盛岡から東京まで約3時間の新幹線車内で読んだのが、石原慎太郎『新・堕落論』と筒井康隆『アホの壁』(どちらも新潮新書)の2冊でした。

   案の定、石原さんの本は、ナショナリズムの化石。最初から最後まで、開いた口がふさがりませんでした。
   いっぽう、かつて作家の田辺聖子さんから愛情をこめて「いちびり」と評された小説家・筒井康隆さんの本は笑いがとまらない。筒井さんにかかると、ナショナリズムは「アホの壁」だそうです。

2012年10月29日月曜日

スーパー公務員


絵 鈴木周作










   10月27、28日の両日、札幌市において、「断ちきろう!貧困の連鎖を~許すな!金利引き上げ」をテーマに「第32回クレサラ被害者交流集会」が開かれ 、わたしも参加しました。

   3年前、自民党政権を追い詰め政権交代の流れをつくるうえで大きな役割を果たしたのが「反貧困」の大運動。その運動のきっかけを作ったのは、毎年この「交流集会」に結集する、サラ金被害と闘ってきた弁護士、司法書士や被害者の会の皆さんでした。

   2006年に金利引き下げの貸金業法改正を実現したあと、多重債務のおおもとにある貧困問題そのものに取り組もうということになり、生活と健康を守る会や全労連、連合など幅広い団体によびかけて、「反貧困」のネットワークを広げていったのです。

   札幌の集会で久しぶりにお会いしたのが、奄美市の福祉政策課の職員、禧久(きく)孝一さん。
   禧久さんは、長年にわたり、借金自殺を防ぎ、多重債務者の生活再建を支援してきました。
   2006年から2007年にかけて、マスコミが禧久さんの活動に注目。NHKの「にっぽんの現場」など多数のテレビや新聞で取り上げられました。また禧久さんは2007年、政府の「再チャレンジ支援功労者」にも選ばれました。当時、あるマスコミは禧久さんのことを「スーパー公務員」と表現しました。

2012年10月26日金曜日

乱読のすすめ69-ドビュッシーと金子みすゞ

 

 










   「ドビュッシーとの散歩」(中央公論新社)は、ピアニスト・青柳いづみこさんが、フランス近代の大作曲家、クロード・ドビュッシーのピアノ曲に寄せて、ご自分のおもいを綴った、おしゃれな短文集です。
   ドビュッシーのピアノ曲でいちばん有名なのはなんといっても、「月の光」(ベルガマスク組曲の第三曲)。青柳さんによると、この曲のもとになったのは、フランスの詩人ヴェルレーヌの「月の光」だとか。
 
 お前の心はけざやかな景色のようだ、そこに 見なれぬ仮面して仮装舞踏のかえるさを、
 歌いさざめいて人ら行くけれど  彼の心とてさして陽気ではないらしい (堀口大學訳)

  …どうしてこの詩があの甘美な「月の光」になったのかよくわかりませんが、わたしの場合、「月の光」を聴くと、いつも思い浮かぶのが、金子みすゞさんの世界です。

2012年10月24日水曜日

乱読のすすめ68-いじめでまとまる人間社会?















   昨日、福島県からの帰りの新幹線で、精神科医・香山リカさんの最新刊「『独裁』入門」(集英社新書)を読みました。大阪の橋下氏を念頭において、現在の独裁型ヒーロー待望論に警鐘を鳴らす内容ですが、新しい論点はないようにおもいました。長期にわたる閉そく感を打破したいという人びとの苛立ちが独裁者を登場させてしまう…香山さんだけでなく、良識派の人たちがすでに指摘してきたことです。

   私が注目したのは、香山さんが本書で引用している社会学者・野村一夫さんの分析です。

2012年10月22日月曜日

歯痛と演説

函館ポストカード「啄木の詩」より











   昨日は、午前中、茨城県つくば市の市議選の応援演説を二か所おこなったあと、午後は群馬県衆院三区の演説会でお話ししました。
  ところが一昨日の夜から激しい歯痛に襲われており、行きつけの国会の歯科診療所はお休みだし、市販の痛みどめは効かないし、自分史上、最悪のコンデションでの演説となりました。

   ふつうなら話している間は緊張して痛みなど忘れるはずなのに、口をあけたりしめたりするだけでいちいち痛むので、忘れることもままならない。

   またこういうときに限って、どういうわけか、話しながら、さまざまな雑念が浮かんでくるのです。

2012年10月21日日曜日

映画のすすめ18-親切はさっと皿にもれ









   映画好きの友人が「絶対おもしろい!」というので、フランス映画「最強のふたり」を観に行きました。 なるほど、これは傑作。フランスはもちろんヨーロッパ各国で空前の大ヒットを記録したのもうなずけます。
   パラグライダーの事故で首から下が麻痺してしまった富豪の中年男フィリップと、介護役として雇われた前科のある黒人青年ドリスの、ユーモアに富んだ実話にもとづく友情物語。おもしろいだけでなく、人間の尊厳とはなにか、介護とはなにかについても考えさせられます。

2012年10月19日金曜日

絵本のすすめ55-だれにもいえない















  わたしはこのごろ、教室のみんなの顔を一人ひとり見ることがある。一人ひとりまるでちがう顔をしている。そのことにおどろく。
   わたしたちは、べつべつの日に、べつべつの病院で生まれたんだ、と思う。
   生まれたあと、四年生になるいままで、それぞれがまったくちがう家で育ってきた。一人ひとり、すきなものもちがうし、得意なものもちがう。なにもかもちがう三十一人がこうして一つの教室で、毎日同じ勉強をしているのだ。

   そして先生からは「みなさん」と、ひとまとまりに呼ばれている。呼ばれると、とたんに三十一人がひとつのかたまりになる。
   「みなさん」のなかにいるのは安心だ、と思うこともある。
   「みなさん」というのが、わたしのことのような気もするし、わたしのことじゃないような気もするから。まるで背の高い草のなかに隠れているような気もちになるから。

   でも。

2012年10月15日月曜日

乱読のすすめ67-ヒットラーのカナリヤ

  

   日本共産党は昨日、今日の二日間、第五回中央委員会総会(略称・「5中総」)を開きました。
   志位委員長は幹部会報告のなかで、いまの政治情勢の特徴は、「反動的逆流」VS「国民運動+日本共産党」のたたかいにあると指摘しました。
    「反動的逆流」とは、民主党の「自民党化」、タカ派安倍晋三を総裁に選んだ自民党のいっそうの右傾化、そして「改憲」突撃隊としての橋下「維新の会」、これら総体を指します。
   わかりやすくいえば、日本を戦争する国に変えるための政界の「タカ派、右寄り再編」が進行しようとしている、ファシズム的な潮流が強まっているということです。
  世界の歴史を振り返ると、ファシズムと最初に真っ向から闘ったのが共産党でした。
   現代日本においても、これら「タカ派、右寄り」勢力と正面対決できるのは、政党では日本共産党しかないでしょう。

 ところで、ちょうど「5中総」の休憩時間に読んでいたのが、デンマークの作家、サンディー・トクスヴィグの『ヒットラーのカナリア』(小峰書店)でした。

2012年10月11日木曜日

乱読のすすめ66-話半分にしても、このアメリカ従属は













   TPP参加反対の集会などでよくお話をされる元外務省国際情報局長の孫﨑亨さん。いつも政府の対米従属姿勢をきびしく批判されています。
   著書のベストセラー『日米同盟の正体』(講談社現代新書)や『戦後史の正体』(創元社)も大変興味深い内容ですが、最新刊『アメリカに潰された政治家たち』(小学館)は、陰謀うずまく政治小説のようでおもしろい。

2012年10月8日月曜日

映画のすすめ17-散り行く花


朝もやの曼珠沙華(埼玉県巾着田)











   先日、朝5時に起きて、『しんぶん赤旗』でも紹介された埼玉県日高市にある巾着田(きんちゃくだ)曼珠沙華(まんじゅしゃげ)公園に行きました。早朝にもかかわらず、たくさんの人が「天上の花」曼珠沙華の赤いじゅうたんを楽しんでいました。
   ただ、ピークは過ぎていたようで、よく見ると色あせた曼珠沙華がちらほら。「ちょっと遅かったな」という声があちこちで聞かれました。午後から仕事なので、約22ヘクタールの公園を早足でまわり、写真を撮って帰りました。

   花が散るさまは、いろいろに表現されます。
   桜は散る  梅はこぼれる 椿は落ちる 牡丹はくずれる…
   奈良、平安時代の女流歌人たちは、みじかき花のいのちを見つめ、もっともふさわしい表現をさがしだしました。咲くことだけでなく、散ることにも趣きを感じる民族性です。
   しかし、花の多くはそんなにきれいに散りません。

2012年10月4日木曜日

乱読のすすめ65-「トモダチ作戦」の真相












   昨年12月のブログで、米軍による東日本大震災被災地への救助、支援活動、いわゆる「トモダチ作戦」にたいする疑念をのべました。
   東京新聞論説委員の半田滋さんは、「トモダチ作戦」の本当の目的は、災害救助というより、米軍にわざわざ檜(ひのき)舞台を与え、「有意義な日米同盟」を日本中に刷り込むことにあったと指摘します(『3・11後の自衛隊』岩波ブックレット)。

2012年10月2日火曜日

絵本のすすめ54-ジャスミンはけむりのなかで












   ぼく、ダニエル。まどのそとで、じんじられないことがおきたんだ。
   まちが、とつぜん戦場みたいになっちゃった。人びとがお店におしいり、いろんなものをぬすんでいく。むかいのキムさんの店もこわされた。
   いったい、みんなどうしちゃったの?