2011年12月7日水曜日

絵本のすすめ20-「さっちゃんのまほうのて」

先天性四肢障害児父母の会 偕成社
赤い靴児童文化大賞受賞














   人類一般の幸福を語るのもいいが、まず目の前で困っている人のために汗をかけ。

   しかし人の痛みや苦しみを、ほんとうに自分のこととしてとらえるのは、かんたんではありません。
   そんなとき、読みかえすのが、「さっちゃんのまほうのて」。


   「さっちゃんのまのうのて」は、指のないさっちゃんのおはなし。



 「おかあさん さちこのては どうして みんなとちがうの?」

 「でもね さっちゃん これがさちこの だいじなだいじなおてて なんだから おかあさんのだいすきな さちこのかわいい かわいいて なんだから…。」






   左手指欠損の障害をもつ作者の志沢小夜子さんは、つぎのように語っています。

   “ うまれつき左手指のない私にとって、結婚をして、子どもを産むことは夢のまた夢、そう育てられました。…けれど私は結婚しました。
   娘が二才をすぎた頃、とつぜん「お母さんの手、お化けみたい」と言いました。あまりのことに悲しくて娘を抱いて泣きました。
…娘は十年の成長過程で、お母さんの手をお化けの手から、かわいい手、そしてお母さんの手でよかったというようになりました。学校でもずい分いろいろなことを聞かれたりして胸いたむ日があったことを、つい最近、話をしてくれました。
   母の障害を見すえて子どもは成長しています。私から子への贈りもの、それはこの母の障害ですと、ようやく胸をはって言えそうな気がします。 ”

   ひとの痛みを知るということは、薄っぺらな同情などでなく、その人の弱さも強さも、まるごと知ることだと、この絵本を読むたびにおもうのです。 「まけるな、さっちゃん」と。