きょう、函館からの帰りの飛行機のなかで読んだ一冊。
「民意」とは何なのか。それはどのように形成されたのか。
気鋭のジャーナリスト、斎藤貴男さんの「民意のつくられかた」(岩波書店)は、「原子力神話」、「事業仕分け」「選挙」などを題材に、世論を誘導するものの「実体」に迫っています。
原発神話に疑問をていする者を排除、抹殺してきたマスメディアとその背後にあるもの、理念なき「劇場」と化した事業仕分け、五輪誘致を叫ぶ石原都知事の二枚舌とおごり、「景気がわるいのは皆さんに元気がないから」「格差は神が与えた試練」と本気でおもっている森田健作が千葉県知事に当選したのはなぜか、などなど、虚妄の民意がつくりだされるさまが描きだされ、こんなことで物事がきまっていいのかと愕然としてしまいます。
斎藤さんは、「あとがき」のなかで次のようにのべています。
「この国には政府や巨大資本の意向がまずあって、いわゆる民意はそれらに都合よく誘導されていくことが義務づけられているものでしかないと思われる場面を幾度も見せつけられた。単に情報操作というものとは異なっている。もっと深いところで、莫大なお金が使われ、マスメディアだけでなく、社会のありとあらゆるメカニズムが動員されて…そのようなシステムに導かれた末に今回の原発震災もあるのかと思うと、悔しくてならない」
「今度こそ私たちは、権力への服従が、『大人の態度』であり、望ましい姿勢だとされている生活様式からの脱却を目指さなければならない…よほど賢くならないと、生きていけない時代なのである」