「資本主義卒業試験」 星海社新書 |
谷間にたれこめた厚い雨雲のように、重苦しい閉塞感が日本全体をおおっています。
雨が降るなら降れ。そのあとの青空を早く見せてくれ。
しかし、この閉塞感も世代によって感じ方がちがう。生れたときから不況のなかにいる若者たちにとっては、希望をいだいて苦しむより、最初からあきらめたほうが楽だ…そういう厭世的な気分がつきまとっている気がします。
漫画家の山田玲司さんは、「資本主義卒業試験」(星海社新書)のなかで、いまの若者たちのあえぎと現代資本主義の犯罪的システムとの関係を告発しています。
“ この国は、絶望であふれている。「夢」や「成長」、「勝つこと」を強いられ、たとえ夢を叶えても苦しく、勝てば勝つほど人生に負けていくような社会。一度はみ出すと二度と戻ってこれなくなる社会。「もう死ぬしかない」というところまで追いつめられる人間が年3万人もいる社会。この狂った国=資本主義社会をどう卒業するのか ”
“ 金の魔力は恐ろしい…。飲める水があふれていた美しい川を廃棄物でドロドロのドブ川にしたのも、何万年もかけて生れた豊かな土地を放射能で惨殺したのも、すべて金の力だ。資本…利益…財産…お金…money…。その力は、人を地獄にも落とす魔物の力だ。…魔物から自分を守れ…ほんとうに大切なのは「今」であり、「自分」なんだ。仕事の奴隷になって、消費の奴隷になって、資本主義の奴隷になって、人生でいちばん大切なことから目を背け、見て見ぬ振りをして生きるんじゃない。今すぐ目を覚ますんだ ”
“ 資本主義を卒業したら…つぎは何主義になるの? ”
“ ははっ、自分で考えるんだよ…そうだな、一緒に考えようか ”
資本主義に飲みこまれずに、「自分」を見いだすこと。そこからすべてが始まる…。
社会主義うんぬんの本ではないけれど、若い人たちにぜひ読んでほしいとおもいました。