甲太郎
「おつとっと、乙さん。それあんたとこのイヌか、かわいいなあ」
乙松
「ネコやがな。なまえは、福笑いちゃんていうねん」
福笑いちゃん |
甲太郎
「紫式部みたいにべっぴんやなあ。ウチのばあさんの若いころにそっくりや。あのな、きのう、ダイモンとかいう議員がしゃべりよる消費税の学習会に行ってきたで」
乙松
「あいつの話は冗談が多いわ。もっとマジメにやれと云うといてんか」
甲太郎
「そやけど、消費税ちゅうのは、ほんまは『ふか・かち』税やて、むずかしいことも云うとったで」
乙松 翁 |
乙松
「ほう、賢いところもあるんやな。能ある鷹は爪を隠すタイプかもしれん。ところで、『ふか・かち』ちゅうのは、漢字でどう書くか、知ってるか?」
甲太郎
「相手見てもの云いや、そんなカンタンな字、知ってるわけないやろ」
乙松
「教えたるわ。あんたの手のひらに書いたるで…(付・加・価・値)税。わかったか?」
甲太郎
「こそばいなあ(訳注…こそばいは、関西方面では、くすぐったいを表す)。そういえば、ウチのばあさんも昔は紫式部なみの美人でな、新婚のころ、よくワシの手のひらに、白魚のような指で、字を書きよったなあ…バカって」
乙松
「いまはそれを毎日大声で云われとるんやろ。それで消費税というのはな、商売やってる事業者が税務署に納める義務がある。事業者はお客さんからもろた消費税から、仕入れで払ろた消費税を引いて、税務署に納めるわけや。しかしな、実際にお客から5%の消費税もらえたかどうかは、税務署の知ったこっちゃないねん。とにかく、計算上、(売上-仕入れ) × 5%を事業者から取ったるでという税金なんや。(売上-仕入れ)ちゅうのが、付加価値のことや。つまり消費税の正体は、事業者の付加価値にかける税金ということや。わかったか?」
甲太郎
「相手見てもの云いや、そんなカンタンなこと、わかるわけないやろ。また、手のひらに書いてみて」
甲太郎 翁 |
乙松
「よっしや。つまり、こうや。…(売上-仕入れ=付加価値)…」
甲太郎
「こそばい、こそばい」
乙松
「なに、もだえてんのや。ええか、付加価値というのは、利益と人件費を足したものと同じや。納める消費税を少しでも減らそと思たら、人件費を減らせばええことになる。それで、給与支払い者を外注や派遣にきり変える。派遣にすれば、仕入れ扱いになって、付加価値が小さくなるからや」
甲太郎
「…もっともっと、手のひらに書いてえー」
乙松
「ええ加減にしなさい。ようするに消費税は消費を冷え込ますだけやのうて、人件費をおさえる役割もはたし不安定雇用や低賃金を増やす恐ろしい税金ということや。こんなもん、10%になったら大変やで」
甲太郎
「ダイモンより説明うまいなあ。わかった。福笑いちゃんを、うちのネコにしてあんたに貸せば、そのレンタル料があんたとこの経費になるちゅうことやろ。」
乙松
「ようわかったなあ。そやけど、かわいい福笑いちゃんは、あんたにはやらへんで」