小川未明 作 山福朱実 絵 架空社 |
絵画に音楽をかんじることはありますが、音楽的な絵本というのは、あんがい少ない。
異色の作家、小川未明さんの「砂漠の町とサフラン酒」は、ちょっともの哀しいアラビア音楽の調べが聴こえてきそうな絵本です。
むかし、美しい女が、さらわれて、遠い砂漠のあちらの町へ、つれられていきました。
疲れているような、また、眠いように見える砂漠は、かぎりなく、うねうねと灰色の波を描いて、はてしもなくつづいていました。
…そのふもとに、小さな町がありました。女は、そこへ売られたのです。
彼女は、ここで、その一生をおくりました。
サフラン酒を、この町の工場で造っていました。彼女は、その酒を造るてつだいをさせられていたのでした。
彼女は、小指を切りました。そして、赤い血を、サフラン酒のびんにたらしました…。
この町のサフラン酒は、…幾百年の後までも、…その魔力をあらわしました…
そして、砂漠のかなたに、赤い町が、不思議な、毒々しい花のように、咲き誇っているのでありました…とさ。
山福朱実さんのエキセントリックな絵もすばらしい。ぜひ手にとってごらんください。