「ヒューマン」 NHK取材班 角川書店 |
わたしたちの「心」のなかには、壮大な人類の進化が埋まっている。
わたしたちの祖先が最初にもっていた「心」とはどんなものだったのか。
往復の新幹線内で読了とはいかず、三日がかりで読み終えたのが、新刊「ヒューマン なぜヒトは人間になれたのか」(NHKスペシャル取材班、角川書店)。自分の祖先の心のなかが覗けます。さあ、人類全員のふるさと、アフリカの大地へ旅立とう…。
本書は、人間の協力するこころ、戦うこころ、貨幣と欲望のこころなどのはじまりを、考古学、人類学、生物学など最先端の研究者のことばと、原住民取材による検証をくわえて大胆に推測したものです。
南アフリカ、ボロンボス洞窟で発見された7万5千年前のホモ・サピエンスがしていた首飾りの意味は? すでに「おしゃれの心」が芽生えていたのか、いやじつは「仲間の絆を大切におもう心」が首飾りの始まりであり、仲間の絆とは、「分かちあう絆」だった。
そして「分かち合って生きること」ができたからこそ、ヒトは人間になれた。他者を蹴落とすより、「分かち合って生きる」ことこそ自然淘汰の法則だった…。
チンパンジーと人間のちがいは?…チンパンジーは相手を助けることはできても、助け合うことができない。一方通行で終わる。
しかし人間は、助けられるまえに、相手を助ける能力がある。すすんで助ける=助けあうことができる。その違いがチンパンジーと人間の大きな差異をうんだ…。
意識しようがしまいが、人間のなかには、闘争に駆り立てられる生理的なしくみ(ストレス・ホルモン)がある。それは「身内に利他的で、対外的には非友好的」な集団が、進化の過程で生き残ったから…。
…などなど、人の心のルーツに迫ります。なぜ人間が、協力し助け合うことを大事にする一方で、戦争をくり返すのか。戦争をしない「新しい心」は可能か。政治経済的な側面だけでなく、心が形成された歴史を知ることも大切だとかんがえました。