福島県白河郡で40年間、酪農を営んできたKさんは、東電福島第一原発事故による出荷停止や風評被害に苦しみました。この間、牛を飢えさせるわけにはいかないと借金をして何とかしのいできました。
先月20日に、ようやく東電から賠償金が振り込まれることになり、一息つけると思って銀行にいったら、なんと、日本年金機構(旧・社会保険庁)が、社会保険料の滞納分として賠償金の全額、約400万円を差し押さえ、口座は空っぽでした。
原発事故のまえ、Kさんには社会保険料の滞納がありました。酪農経営が苦境におちいっていたのです。それでも、払えるときは何とか一部でもと払っていました。そんなときに追い打ちをかけるように原発事故が起きたのです…。
事故のあと、白河の年金事務所は、しばらく様子をうかがっていました。昨年末、Kさんは「賠償金が入ったら、少しずつでも滞納の返済にまわします」と年金事務所に話しました。ところが、年金事務所は、賠償金が入るとみるや、「差し押さえ予告通告書」をかざし、振り込まれたその日に、一方的に全額を差し押さえてしまったのです。
社会保険料を納めるのは事業主の義務です。しかし、Kさんのように、経営難からはじまった滞納については、年金事務所が分納の相談にのったり、最終的に差し押さえをする場合でも、本人の経営が続けられるかどうか、くらしが成り立つかどうかを充分、考えてから執行にふみきるのが、行政として当たり前の姿勢です。ましてや原発被害までこうむったのですから、特別の配慮があってしかるべき。
にもかかわらず、白河の年金事務所は、Kさんのその後のくらしがどうなろうと知ったことではないと、非人道的な取り立てをおこないました。
「払わないと言っているわけじゃない。少しずつ納めるから、福島の実態を見極めて、全額とらないでほしいだけです。人道的な政治をしてほしい」と、Kさんは話します。
さらに調べてみると、なんと差し押さえた金額も実際の滞納額を超えて(資格喪失になった人の分まで)差し押さえ、取り過ぎた分は、Kさんに返すのではなく、先月の保険料やこれからの保険料に充当するなど、勝手な処理をしていました。原発被害者にたいして、そこまでやるのか。
これでは、まるで江戸時代、年貢を滞納した農民をいじめる悪代官そのものではないか。
原発事故は国と東電の責任で起きたものではなかったのか、 東電の賠償金には国のお金もふくまれているのではないのか、そんなこともわからず、目先の成果だけを追った低劣な所業です。厚労省に徹底調査を要求しました。
この問題は、本日の参院予算委員会で、わが党の田村智子さんが取り上げる予定です。
<追記・2月8日>
昨日、田村智子議員が、小宮山厚労大臣に、白河年金事務所の差し押さえ問題を質問したら、こともあろうに、大臣はKさんのことを、「500万円も滞納があった」「差押え予告書を何回にもわたって無視した」と、まったく数字も経過も、事実とちがうデタラメをならべたて、テレビのまえで、いかにもKさんを悪質な滞納者のようにえがきだしました。
即座に田村議員が反論し、徹底調査を要求、大臣も「経緯や事情は確認する。滞納額以上の差し押さえは差額を返還する」と答えました。
非道な差し押さえをしたうえに、大臣にウソまでふきこむ厚生労働省の役人体質にあぜんとしました。またそれを鵜呑みにして答弁した小宮山大臣の見識のなさにも呆れました。
田村議員の質問には、「よく追及してくれた」「厚労省は冷酷すぎる」など、大きな反響がありました。
一方、小宮山大臣の発言をもとに、「悪質な滞納者まで共産党は守るのか」という、誤解にもとづく電話もありました。テレビの前で、虚偽発言をした小宮山大臣の責任は重大です。
私が担当する予算委員会でのことなので、大臣発言の議事録削除と謝罪を理事会で要求。厚労省で対応を協議中です。