ぼくは、はせがわくんがきらいです。はせがわくんと、いたら、おもしろくないです。なにしてもへたやし、かっこわるいです。はなたらすし、はあ、がたがたやし、てえとあしひょろひょろやし、めえどこむいとるかわからへん…。
長谷川集平作「はせがわくんきらいや」(復刊ドットコム)は、昭和30年ころにおきた「森永ヒ素ミルク事件」を題材に、作者自身の実体験もまじえた絵本です。
ようちえんのとき長谷川くんは来たんや。乳母車に乗せてもろて来たから、みんな「赤ちゃんみたいや」ゆうて笑ろてもたで。
先生が「長谷川くん、からだ弱いから大事にしてあげてね」ゆうた。
「あのね、あの子は、赤ちゃんの時、ヒ素という毒のはいったミルクを飲んだの。それから体こわしてしもたんよ」と、おばあちゃんがいうた。「でもあの子、元気な方なの。もっとひどい人や死んだひともぎょうさんおったんよ」
長谷川くん、泣かんときいな。長谷川くん、わろうてみいな。長谷川くん、もっと太りいな。長谷川くん、だいじょうぶか。長谷川くん。
長谷川くんといっしょにおったら、しんどうてかなわんわ。長谷川くんなんかきらいや。大だいだいだい、だあいきらい。