関西弁の「いちびる」の意味は、「ふざける」「調子にのって、はしゃぐ」。その名詞形である「いちびり」は、「お調子者、目立ちたがり屋」などと、ネット辞書などでは説明されています。
しかし、それだけではどうもニュアンスが伝わっていない。京都うまれのわたしの勝手な定義では、「みんながまじめな顔で話をしているときほど、冗談をいいたくなってしまう、どうしよもない、あまのじゃくな性分」「おもろかったらええやんけというお笑い至上主義」といった感じ。
大阪出身の絵本作家、長谷川義史さんの「いろはのかるた奉行」(講談社)は、まさに関西人いちびり絵本です。
「いぬも あるけば ぼうにあたる」 「いぬも あつけりゃ ぼうっとする」
“ もともとイヌは暑いのはにがてなので、ぼうっとするのはあたりまえなのじゃ。自分のとくい、ふとくいなことをよく考えずに、行動してはいかんということ。あとさきのことも考えずあまりむりなことをするなよということじゃ。それでええんじゃ ”
「のどもとすぎればあつさわすれる」 「のうてん すぎれば つらさわすれる」
“ お父さんが鏡を見ておる。気にしてるんじゃ、はげを。とくにはげはじめは気になるもんじゃ。しかし、はげがのうてんまでたっしたとき、お父さんは思う。「あきらめた」と。あきらめがつくと、はればれとすがすがしい気分になる。つらいことにもにげるな、心配はいらんということじゃ ”
ちょっとクサイ人生訓をつけるのも、いちびりの一種かも。
いちびりには、ときに尊敬の気持ちもこめられます。
「長谷川さんは、なかなかのいちびりやな(=相当、人とちがう才能と工夫のある人だ)」