2013年3月6日水曜日

無縁仏












   自殺は、人の命に関わる 極めて「個人的な問題」である。
   しかし同時に 自殺は「社会的な問題」であり 「社会構造的な問題」でもある。
                 (NPO法人ライフリンク『自殺実態白書2013』より)
 
   昨日、国会で「自殺対策を推進する議員有志の会」の会合が開かれ、「乱読のすすめ76」で紹介したNPO法人「自殺対策支援センター・ライフリンク」代表の清水康之さんが先日、発表された『自殺実態白書2013』について報告をしてくれました。
 『白書』は、清水さんたち「ライフリンク」のメンバーが様々な方々の協力もえながら、2007年から始めた「自殺実態1000人調査」の最終結果を取りまとめたものです。
   今後の具体的な自殺対策へとつなげるために、自殺者523人の遺族への聞き取りをふくめ、あらゆる角度から日本の自殺実態の解明に精力的に取りくんだ画期的な報告内容となっています。
 自殺者をたくさんうみだすような社会構造は変えなければなりません。同時に、社会的な対策によって救えるいのちは救いたい。そのための手がかりを与えてくれるのがこの『白書』です。ぜひ、多くの方に読んでいただきたいおもいます(「ライフリンク」で検索すると『白書』が見られます)。









 
  『白書』の第一章「自殺の危機経路-ひとりひとりの生きた奇跡」に、あまりに悲しい30代女性のことがふれられていました。

  <無縁者の自殺事例 N僧侶による報告>
 地方から上京し、一般企業に就職するものの、挫折。繁華街で風俗の仕事を始める。しかし、対人関係からうつ病になり、睡眠薬がないと眠れないようになる。ある時、無断でお店を休んだことがきっかけで店長と口論に。その後、仕事を辞める。当時、好意をよせていたホストからもお金を騙しとられ、部屋に引きこもりがちになる。
 しばらく後、隣のマンションの住民から「**号室から変な匂いがする。臭い」という連絡を受けた大家さんと警察が、風呂場で首を吊って倒れている姿を発見。1Kの部屋からは大量の睡眠薬とビール缶などのアルコールが散乱し、いわゆる「ゴミ屋敷」。
 親族は実の娘が風俗嬢であった事にショックを受け、実家で葬儀・納骨を拒否。大家から連絡を受け、私が葬儀を担当。故人の部屋の中には、腰の高さまでゴミが散乱しており、故人の生前の精神状態を象徴するようであった。「娘のことは、もうなかったことにして下さい」と、親族は一切の関わりを拒否している。(遺骨はN僧侶のお寺に無縁仏として安置)。

                      *

  明日より6日間、参議院ODA(政府開発援助)調査団の一員として、インドにいきます。
  仏さまのふるさとインドで、彼女のご冥福を祈ってまいります。