この間、尖閣諸島や竹島など、領土問題をめぐり、他国との衝突がひんぱんに起きています。
韓国が領有権を主張している竹島(韓国名・独島)は、歴史的事実から日本の領土だとおもいますが、大事なことは、韓国側と共同でオープンな歴史研究などをすすめ、あくまで話し合いによって解決していくことだとかんがえます。
ところが、そういう冷静で率直な対応が、いまだにできないのはなぜか。
5年前に出版され、賛否両論を巻きおこした、朴裕河(パク・ユハ)さんの「和解のために」の分析と提案を、あらためてふりかえるべきではないかとおもいます。
朴さんは、まず話し合いの「土台」をつくることが大切とし、日韓両国にある排他的、感情的な「愛国主義」を克服する必要性をうったえるとともに、日本における良識派の存在を評価し、事実と平和主義による解決の方向を提起しています。
「慰安婦」問題では、「民族というものさしで加害者と被害者を画一的に区分することは、そのものさしに含まれない、また別の被害者と加害者を隠ぺいする。さらに民族内部の加害者と被害者の関係を正確にみることを妨げる」と、民族をこえて人間の正義そのものを問うべきだと主張します。
戦争という暴力強制のしくみ、その遂行者と加担者の責任を問いながら、ほんとうに国を愛するなら、両国の虐げられた人びとにこそ思いをはせるべきだという朴さんの信条に、強い共感をおぼえます。