2011年11月15日火曜日

乱読のすすめ21-ジョン・ハート「川は静かに流れ」

早川書房










   アメリカは好きですか?
   TPPへの参加を強要したり、軍事基地を置いて居座ったり、日本を目下の子分のようにあつかうアメリカ。
  アメリカが好きですか? 

   そんなアメリカの指導者たちはけしからんけれど、普通の人びとは、日本人と似たところもあって、きらいにはなれません。

   アメリカの映画や小説には、川を背景にした話がたくさん出てきます。
   名作映画「マディソン郡の橋」も、川がそこにありました。

 

   古くは映画「西部開拓史」。1830年代、新天地をもとめてオハイオ川をのぼった、ある開拓一家の三代にわたる物語を叙事詩的にえがいたものです。
   開拓者の苦労をたたえる半面、夢破れ傷ついた人びとやインディアンの悲劇なども織り込み、どこか切なさが残る映画。全編が、ときにおだやかに、ときに荒れ狂うオハイオ川の流れを象徴しているようにおもえます。

映画「西部開拓史」より






   ジョン・ハートの小説「川は静かに流れ」は、ノースカロライナのヤドキン川のほとりで起こった事件を題材にしたミステリーです。
   一度は失われた家族のきずなの再生、傷つけて別れた恋人との愛の復活、そんなことが可能なのか…。人間の愛憎劇をよそに、ただ川は流れつづけます。


   川の流れに、無常やはかなさを感じるこころは、日本人となにも変わらない。

   こういう映画や小説をうみだすアメリカや、アメリカ人は、「好きだな」とおもいます。