2011年11月6日日曜日

乱読のすすめ18-姜尚中「あなたは誰?私はここにいる」

デューラー「自画像」













   あなたは、この絵をご覧になって、なにを感じますか?
   
   28歳の姜尚中(カン・サンジュン)さんは、自分が何者であり、何をなさねばならないかが見いだせず、悶々(もんもん)とした日々を送っていました。
  そんなとき、このアルブレヒト・デューラーの「自画像」をみて、 「わたしはここにいる。おまえはどこに立っているのだ」と、問いかけられているようで、 それまでの心の迷いを打ち砕かれ、粛然とした気持ちになったといいます。


   「あなたは誰?私はここにいる」(集英社新書)。
   きのう、仙台から東京へ帰る新幹線の中で読んだ一冊です。
   NHK「日曜美術館」の司会もつとめた、東大大学院教授、姜尚中さんが、世界の絵画、彫刻のうち30以上の作品について、独自の解説しています。まさに、姜館長による「新書美術館」。



   買って読んでもお金と時間の無駄になるだけの、中身のない「新書」が乱造されているなか、740円では申し訳ないと心から思わせるほど豊かな内容。ぜったい、おすすめです。

   ただし、芸術は観る人それぞれの年齢や立ち位置によって、感じ方は変わります。
   姜さんの解説やおもいを参照しながらも、個々の作品の受けとめ方は各自の自由。

   ちなみに、55歳の私には、青年デューラーはなぜ、わざわざキリストに似せた姿でこの「自画像」を描いたのか。デューラー自身が、まだ心の迷いをふっ切る途中だったように見えます。