2012年9月28日金曜日

それは安酒の酔いに似ている


埼玉県秩父癒しの森「花の回廊」
コスモス満開










   “ 国境線というものが存在する以上、残念ながら(というべきであろう)領土問題は避けて通れないイシューである。しかしそれは実務的に解決可能な案件であるはずだし、また実務的に解決可能な案件でなくてはならないと考えている。 ”
   “ 領土問題が実務的課題であることを超えて、「国民感情」の領域に踏み込んでくると、それは往々にして出口のない、危険な状況を出現させることになる。それは安酒の酔いに似ている。 ”

  …今朝の朝日新聞に作家の村上春樹さんが「魂の行き来する道筋」と題するエッセイを寄稿しています。

   “ 文化の交換は「我々はたとえ話す言葉が違っても、基本的には感情や感動を共有しあえる人間同士なのだ」という認識をもたらすことを重要な目的にしている。それはいわば、国境を越えて魂が行き来する道筋なのだ ”
   “今回のような尖閣諸島問題や、あるいは竹島問題が、そのような地道な達成を大きく破壊してしまうことを、一人のアジアの作家として、また一人の日本人として、僕は恐れる ”

さまざまな色でなかよく自己主張
ジニア(百日草)











   自民党の新総裁にまた安倍晋三さんが選ばれました。まさに「安酒の酔い」に乗じて、総裁選に勝利。安倍さんに文化的な理解力がないのは試され済み。
   民主党も、公約やぶりの消費税増税に少しの逡巡もなく、野田さんを代表に再選しました。こちらは、日本がどうなろうと、自分たちは一日でも長く政権にしがみついていたい、権力の座に「悪酔い」している人びとの集団。

   こういう連中に、村上さんのいう「アジア人」、本当の意味の「日本人」の視野を求めることは無理でしょう。
  村上さんは、つぎの言葉でエッセイを締めくくっています。

“ 安酒の酔いはいつか覚める。しかし魂が行き来する道筋を塞いでしまってはならない。その道筋を作るために、多くの人が長い歳月をかけ、血のにじむような努力を重ねてきたのだ。そしてそれはこれからも、何があろうと維持し続けなければなくてはならない大事な道筋をなのだ ”