2012年9月18日火曜日

乱読のすすめ63-ピエドラ川のほとりで私は泣いた

訳・山川紘矢・亜希子 地湧社














   “  ピエドラ川のほとりにすわって、私は泣いた。この川の水の中に落ちたものは、木の葉も虫も、鳥の羽さえ、岩に姿を変えて、川底に沈むと言い伝えられている。心を胸の中から取り出して、流れの中に投げ込めるものならば、恋もこの苦しみも終わって、私はすべてを忘れることができるだろうに。 ”
  ブラジルの作家、パウロ・コエーリョは『ピエドラ川のほとりで私は泣いた』で、ひとりの女性の愛の選択と神の再発見を、スペイン北部の風景のなかで詩的に描きだしました。

















    精神世界を描いた作家には、『星の王子さま』で有名なサン・テグジュペリがいますが、パウロ・コエーリョの世界も透明感があり神秘的です。

    「挫折も悲劇も不可避の出来事である」。
   コエーリョは『第五の山』のなかで、運命を受容し乗り越えて生きることの厳粛さを説きました。
   もしも生涯で一冊だけ本を選べと言われたら、迷うことなく『第五の山』を選ぶでしょう。


パウロ・コエ―リョ 












   聖書の話が多いので、コエーリョは聖職者か神学の先生かと思ってしまいますが、実際の経歴は人間臭い。
   1947年にブラジルのリオ・デ・ジャネイロに生まれ、大学の法学部に進学しますが、突然、学業を投げ捨て、2年間の放浪の旅に。帰国後は作詞家の仕事につきますが、また途中で仕事を放棄して世界をめぐる旅に出てしまいます。
   1987年にスペインで巡礼の道を歩いた経験をもとに書いた『星の巡礼』で作家デビュー。次作の『アルケミスト』、『第五の山』は世界的ベストセラーになりました。

 <神は教会の中ではなく、ちまたに存在する。そして確実に存在する。なぜなら、神とは人の愛    そのものだから>
  放浪のすえパウロ・コエーリョが発見したのはこのことではなかったか、とおもいます。