2012年10月11日木曜日

乱読のすすめ66-話半分にしても、このアメリカ従属は













   TPP参加反対の集会などでよくお話をされる元外務省国際情報局長の孫﨑亨さん。いつも政府の対米従属姿勢をきびしく批判されています。
   著書のベストセラー『日米同盟の正体』(講談社現代新書)や『戦後史の正体』(創元社)も大変興味深い内容ですが、最新刊『アメリカに潰された政治家たち』(小学館)は、陰謀うずまく政治小説のようでおもしろい。



  岸信介、田中角栄、小沢一郎、鳩山由紀夫…日本のどんな有力政治家も、「対米従属」のうちはいいが、少しでも「対米自主」の姿勢を取ったとたんに、アメリカとアメリカ追随勢力によって潰されてきた。田中角栄の日中国交回復や小沢一郎の「第7艦隊発言」、鳩山由紀夫の「東アジア共同体論」などなど。
   その潰し方は鮮やかで、アメリカの息のかかった日本の司法とマスコミが追い落としに動く。これでは日本の首相を「選んでいる」のはアメリカではないか、まるで日本はアメリカの属国だ…。










 たしかにアメリカは中南米、中東をはじめ世界の国々で謀略活動を行ってきた国です。
   日本でも、数年前、郵政民営化が大議論になったとき、アメリカの圧力を批判した評論家などがマスコミから干された一方、ブッシュの弟分の小泉首相(当時)はマスコミの全面支援を受けていました。











 本書で取り上げられている政治家たちが、ほんとうに「対米自主」だったのかどうかは疑問がありますが、少しでもアメリカの「虎の尾」を踏んだことで失脚させられたとしたら……話半分に聞いても、どこかリアリティを感じさせるストーリーだと思いました。

   孫﨑さんは、本書の最後をつぎのように結んでいます。
    「現在は、まさに歴史的な転換点にあるのかもしれません。その転換を実現するために、官邸前に集まった数万の人びとは『野田政権打倒』の声をあげています。…その背後には、はっきりとアメリカの姿が見えています」
   「私は一日も早く、一人でも多くの日本人が、アメリカにたいする幻想を捨て、対米従属のくびきから逃れてほしいと願っています」
   「原発再稼働やオスプレイの配備、TPPへの加盟を阻止すれば、アメリカにたいしてノーを突きつけることになります。そして、日本は本当の意味での『戦後』に終止符を打ち、新たな地平が開けるのです」