ぼく、ダニエル。まどのそとで、じんじられないことがおきたんだ。
まちが、とつぜん戦場みたいになっちゃった。人びとがお店におしいり、いろんなものをぬすんでいく。むかいのキムさんの店もこわされた。
いったい、みんなどうしちゃったの?
かあさんはいう。
「人はね、あんまりはらがたつと、どうしようもなく、なにかをぶつけたり、こわしたくなるだろ。ところがそうやっているうちに、なにが正しくてなにがまちがっているのかなんて、どうでもよくなってくるのさ。しまいには、こんなぼうどうなんてことを、おこしちまうんだよ」
アパートの下では、手あたりしだいにものがこわされていく。
店のウインドウも、くるまもがいろとうも。
「ほんと、みんなおこっているみたいだ。でも、なんか、たのしそうにもみえるよ」
怒りと憎しみが爆発した町で、少年がねこのジャスミンを見て気がついた「和解」のすがたとは…。
「スモーキーナイト ジャスミンはけむりのなかで」は、アイルランド生まれの「社会派」児童作家イブ・バンティングの作品。
絵は大胆かつ独特の様式で高い評価を受けてきたディヴィツド・ディアス。
1995年のコルデコット賞受賞作です。