2012年5月15日火曜日

ガリ版刷りは味がある

日本謄写芸術院会員作品
山形謄写印刷資料館蔵











   先日、経済問題の懇談会で山形へ行ったとき、山形ガリ版印刷資料館の事務局長である後藤卓也さん(中央印刷・社長)とお会いしました。
   印刷の電子化にともない、消えてしまったガリ版印刷(謄写印刷)。昭和の香りがただようガリ版印刷の文化を永久保存しようと、後藤さんはお父様といっしょに私財を投じて資料館を設立されました。文化というものは後藤さんのような地域の方々の地道な努力があってはじめて伝承されていくのだと感激しました。

   とにかく、ガリ版刷りは味がある。昭和の文化をただ懐かしむのでなく、惜しむ気持ちにさせる、そういう技術だとおもいました。

鈴木藤吉 作品










   そういえば、戦前の反戦新聞「聳(そび)ゆるマスト」も、ガリ版のザラ紙刷りだったとのこと(「聳ゆるマスト」小栗勉、かもがわ出版)。



   戦前、広島県呉地区軍事部では、非合法下にあった日本共産党の党員によって、反戦をよびかける『聳ゆるマスト』が発行され、配布されました(1932年2月創刊、同年10月まで)。『聳ゆるマスト』の発行は、苛烈な弾圧下にもその網をかいくぐって続けられ、帝国海軍の心臓部に「反戦」ののろしをあげたのです。

   戦後の民主化運動、労働運動をささえたのもガリ版印刷でした。
   人は言葉によって真実を知り、言葉によって変革の方法を学ぶ。とはいえ、いまや紙の上の言葉より、インターネット上の言葉で、民衆運動が組織される時代になりました。


   そんななか、気になるのが最近の中国の動向。中国共産党の理論誌「求是」(第8号・4月下旬号)が、「インターネットを放置するな」という題の論文をのせています。
   その理由として、①社会の安定と国家の安全を脅かす可能性があること、②ネット上の人権侵害が日常茶飯事となっていること、③ネット上で不当な商業行為が市場経済の秩序を乱していること、④わいせつ、ポルノ情報がはんらんしていること、の4つをあげています。
   ②~④を問題視するのはわからなくもないが、①は誰がどういうモノサシでそれを判断をするのか? 社会の安定とはなにか、 国家の安全とはなにか?
   さらに、「ネットユーザーは自由を享受すると同時に、自らの言動に社会的、法的責任を負わなければならない」とし、「警察機関が法にもとづいてデマ流布者を取り締まり、電信管理部門が法にもとづきデマを広めるサイトを閉鎖する行動に、われわれは喝采をおくる!」と主張しています。
   しかし、これも誰がデマと事実のちがいを判断するのでしょうか?
   …すべて官憲? ちょっと怖いなー。