2012年1月17日火曜日

絵本のすすめ29-「雪窓(ゆきまど)」

安房直子、作 山本孝、絵 偕成社














   先日、列車で札幌から函館、さらに津軽海峡トンネルをぬけて、青森から弘前へと移動しました。
   車窓をながれる真っ白な雪景色を眺めながら、思索にふけろうとすると、頭の中まで真っ白になってきて、そのうち眠ってしまいました。

  「雪窓」は、うたた寝の夢に出てきそうな幻想的なお話。

   山のふもとの村のぽっとあかりのともったおでんの屋台。

たぬきが人間の恰好をして、おでんを食べに来ます。たぬきは、こんにゃくを食べたいのだけれど、なまえがわからない。
   「その、三角のぷるぷるっとしたやつください」
   屋台のおじさんは、たぬきとわかっていながら、こんにゃくをお皿にとって、からしをたっぷりそえてやりました。たぬきはじょうきげんで、おでんを食べて、おじさんと話しこみました。



   屋台のおじさんは、だいぶむかしに、おかみさんをなくし、すこしむかしに、おさないむすめをなくしました。むすめの名まえは、美代といいました。小雪の舞う晩なんかには、遠い空のほうから、美代の泣き声が、うわーんと、わいてくるような気がするのです。

   雪がどっさりつもったある晩のこと。赤いかくまきをかぶった娘さんが屋台に。顔をみるとどことなく美代ににています。美代が生きていたら十六。かくまきの娘さんもちょうど十六くらいでした…。