2013年3月3日日曜日

映画のすすめ20-歯をくいしばる子ら

映画「警察日記」の二木てるみさん










   きのう、羽田空港で、搭乗口ちかくにある待合席にすわっていると、前の席で小学3年生くらいの女の子が両親に叱られていました。5、6歳の男の子がそばで泣いています。お母さんが怒っている理由は、お姉ちゃんが弟の面倒をちゃんとみない、姉として自覚が足りないということ。お父さんも、弟が泣いているのはおまえのせいだとお姉ちゃんを責めていました。
   女の子は歯をくいしばって、涙をこらえています。
   なにがあったか知りませんが、親のうちどちらかはお姉ちゃんの味方になってあげてもいいのにとおもいました。

   その女の子の顔をみて、思い出したのが、映画『警察日記』(1955年)の二木てるみさん。
   母親に捨てられた姉弟のお姉ちゃん役です。弟はまだ赤ん坊。やさしい警察官(森繁久弥)のおかげで二人は引き取り先が見つかりますが…。二木さんの弟をおもうけなげな表情が観る人の涙をさそいました。










   イタリア映画の名作『自転車泥棒』(1948年)にも、歯をくいしばり、現実に耐える子どもが登場します。
   戦後の混乱期、失業者であふれかえるローマでの父子の物語。やっとポスター貼りの仕事にありついたお父さんですが、仕事に必要な自転車を盗まれてしまいます。父といっしょに自転車を探す息子のブルーノ(エンツォ・スタヨーラ)。自転車が見つからず、途方にくれたお父さんは、とうとう自ら自転車泥棒に…。情けない父親への失望と愛情。必死で涙をこらえるブルーノのすがたそのものが当時のイタリアリアリズムの最高の表現でした。










   野村芳太郎監督の『砂の器』(1974年)で、主役・和賀英良の子供時代を演じた春田和秀さんの演技も卓越していました。村を追い出され、放浪する父子。無言の表情だけで、ハンセン病をわずらう父への愛情、差別への怒りをあらわしました。砂浜で砂の器をつくって遊ぶシーンは忘れられません。









   ちかいところでは、2012年公開の映画『愛と誠』の加藤清史郎くん。主人公・誠の荒れた少年期を演じました。
   これまで、お坊ちゃん役が多かった加藤くんですが、はじめての「汚れ役」。表情に、身を崩していく母親への愛憎がこめられていて素晴らしかった。

 子どもは、大人に負けないくらい色々なことを考え、歯をくいしばってたたかっていることを、映画から教えられます。