2013年2月19日火曜日

ドラゴン・タトゥーの男









   映画のすすめ(11)で、「ドラゴン・タトゥーの女」を紹介しましたが、先日、鳥取のビジネスホテルに宿泊したとき、本物の「ドラゴン・タトゥーの男」を見ました。

   大浴場のあるホテルでした。夜の10時ころ、浴場へ行くと、70歳くらいの小柄なおじいさんが一人だけいて、すみっこの洗い場で身体を洗っていました。背中一面に紺色の昇り竜の刺青(いれずみ)です。ただ、年齢のせいか、色がくすんでいるようにおもいました。

 小学生のころ、京都の銭湯でよく刺青の男の人を見ました。高倉健をすこし太らせたようなおじさんでした。なぜお湯のなかでも絵の色が落ちないのか不思議で眺めていると、腕の刺青をさわらせてくれたことがありました。おじさんは、「ものすごう痛いから、ぼんはやめときや」といいました。

 そんなことを思い出しながら、湯船につかっていると、中年の男性が一人、浴場へ入ってきました。男性は、刺青のおじいさんを見るやいやな、すぐに出て行ってしまいました。
 おじいさんは何も気づかず身体を洗い続けています。
 しばらくすると、ホテルの従業員らしい男性がズボンのすそをあげ、裸足にスリッパをはいて浴場に入ってきました。おじいさんを見つけると、「すみません、他のお客様からクレームがきておりまして…」といいました。
 おじいさんは、「ああ、すみません」と頭を下げ、湯船にもつからず、下を向いたまま、申し訳なさそうに出て行きました。

   さっきの中年男性がホテルに苦情をいったのでしょうが、「イレズミお断り」の張り紙もないのに、お年寄りをすぐに追い出すのは酷だとおもいました。しかも宿泊のお客さんの一人のはずです。身体も冷えただろうに。
   それとも、刺青をするような人は、散々わるいことをしてきただろうから、いくつになっても、追い出されて当然だと考えるべきなのでしょうか。

 おじいさんの背中の竜も泣いているように見えました。