2013年2月11日月曜日

乱読のすすめ77-デフレよりもたちが悪い

絵 札幌の水彩色鉛筆画家 鈴木周作さん











   おととい、新大阪駅の書店で、安倍政権が誕生する以前から、今日の円安・株高の事態を予測していた面白い本を見つけました。「円安恐慌」(菊池真、日経プレミアシリーズ)です。
   「円安・インフレになったからといって、それが即、収入の増加をもたらすことはありません。収入が増えないなかで(輸入物価の高騰で)物価だけが上昇するわけですから、当然に生活は今以上に苦しくなります」
   「景気がよくなり業績が向上した結果、収入が増え、使えるおカネが増えたことからモノにたいする需要(ディマンド)が増し、その結果として物価が上がる『ディマンド・プル・インフレ』であれば、インフレはデフレより望ましいです。しかし、収入が増えずに費用(コスト)の上昇により物価だけが上がる、いわゆる『コスト・プッシュ・インフレ』は、デフレよりもたちが悪いのです」

日経プレミアシリーズ  
 菊池 真

 









   投資アドバイザーの菊池真さんがこれからの資産運用、資産防衛のために、経済の先を読み取ろうと呼びかしけた渾身の一冊。投資の指南書のたぐいかとおもったら、なかなか鋭い経済分析本で、学者・研究者の書いたものとは一味ちがう金融現場の臨場感があります。
 もしもこのまま「コスト・プッシュ・インフレ」が続いたら…菊池さんが予測する「最悪のシナリオ」とは、
 ※円安進行初期…株価大幅上昇。「円安大歓迎ムード」一色に。
 ※円安進行中期…輸入物価上昇で円安にたいする懐疑的ムードが徐々に台頭。輸入に原材料を依存する企業の業績に悪化のきざし。株価全体にもブレーキが。日本国債の金利も上がり始める。
※円安進行後期…円と日本国債、日本株のトリプル安へ。世界通貨のなかでの円の独歩安。国債価格の下落。国債を保有する金融機関の含み損拡大。過度の円安で日本株は売られ株安へ。

   菊池さんのシナリオどおりにならないようにするためにも、やはりどうしても、賃金の引き上げによる需要拡大からデフレを克服していくしかないとおもいました。