2012年3月6日火曜日

絵本のすすめ36-いじめと戦争の関係












  「わたしのいもうと」(松谷みよ子・文、味戸ケイコ・絵、偕成社)は、 童話作家、松谷みよ子さんのところに届いた一通の手紙からうまれた絵本です。
   「わたしのいもうとの話をきいてください」
   小学校でいじめにあい、心を閉ざし、死んでしまった妹。いじめた子どもたちは、加害者としての自覚もなく、何事もなかったかのように、中学生に、高校生になっていく…。
   「いじめ」をテーマにした絵本ですが、反戦を静かに語る「絵本・平和のために」シリーズの一冊になっています。その理由は…。


   手紙には、つぎのように綴られていました。
   「自分より弱いものをいじめる。自分とおなじでないものを許さない。そうした差別こそが戦争へとつながるのではないでしょうか」
   松谷さんは、本のあとがきで、つぎのようにのべています。
   「そうですとも、そうなのよとわたしは、手を握りたい心持であった。おなじ日本人のなかでの差別は、他民族への差別とかさなり、人間の尊厳をふみにじっていく。アウシュビッツも、太平洋戦争でわたしたちが犯した残虐行為も、ここにつながる。おそろしいのは、おおかたの人が自分でも知らないうちに、加害者になっている、またはなり得ることではないだろうか」

  そのとおりです。さらにいえば、加害者というのは、残虐行為を扇動する者、扇動者を支持し積極的に残虐行為に参加する者、自分の身を守るために仕方なく参加する者、沈黙する傍観者、で構成されているのではないでしょうか。
   扇動者は、ひとりで扇動者になったわけではありません。ひとびとに支持、あるいは容認されたから、扇動者になれたのです。いじめや戦争をくいとめるためには、扇動者をゆるさない「個の確立」が何より重要だとおもいます。