2011年7月2日土曜日

映画のすすめ1―クリント・イーストウッド監督



   わかいときの夢は脚本家になることでしたので、学生時代は映画館に入りびたりでした。

   最近はせっかく映画館に出かけても、ガッカリする作品ばかり。評価がさだまってから、WOWOWか、DVDでみたほうが無駄がないと思いつつ、つい大きな画面にひかれて、時間があると映画館に足が向いてしまいます。

  「こころがちょっと乾きそうなとき、映画をみなさい、音楽をききなさい」―いまは音楽教師をしている高校時代の女ともだちがいいました。「年をとるほど、情操教育が大切なのよ」とも。


   クリント・イーストウッドは、現代の中で、こころに響く名作を残せる数少ない監督の一人だとおもいます。とくに次の二作品が必見です(DVD購入も惜しくない、保存版にする価値あり)。


   「ミリオンダラー・ベイビー」は、貧しい人生からぬけだそうと、自分のボクシングの才能だけを頼りにロサンゼルスにやってきた31歳の女性マギー(ヒラリー・スワンク)が、場末のボクシング・ジムを経営するかつての名トレーナーのフランキー(クリント・イーストウッド)のもとで、世界チャンピオンをめざす話ですが、たんなるアメリカンドリームでもハッピーエンドでもありません。
   マギーと家族の関係や孤独、アメリカ社会のひずみをえがき、そのなかでの師弟関係をこえた深いきずなに心打たれます。また「安楽死」についても考えさせられる深い映画です。

   「グラン・トリノ」は、朝鮮戦争の帰還兵である孤独な老人コワルスキー(クリント・イーストウッド)が、アジアからやってきた隣人のモン族の娘と息子の姉弟をたすけ、不良グループと対決し、最後はみずから命を投げ出す物語です。
   かつてフォードの自動車工であったコワルスキーは自分のつくった名車「グラン・トリノ」を新車のようにみがき、大事にしていました。彼の死後、その名車は…。
   家族や人種をこえた友情とは、憎悪の連鎖を断ち切ることはできるのかなど、おおくのことを私たちに問いかけます。
クリント・イーストウッドの息子カイルが音楽を担当。「グラン・トリノ~♪」軽妙でしゃれたジャズのような主題歌がいつまでも耳に残ります。 


  小説もそうですが、ときに映画も、他人の人生を疑似体験するようなところがあります。
 クリント・イーストウッドの映画は、「自分ならどうするだろうか」いつも考えながらみてしまいます。