2011年8月30日火曜日

乱読のすすめ4―雨のふる日はやさしくなれる




  雨の日がつづくと、思いだす詩集があります。
 「雨のふる日はやさしくなれる」です。

「妹へ」
俺の 俺だけの たった ひとりの 妹よ 
俺よりも 幸せになれよな 俺のように 悪くなるなよな
いつも いつも 心の中にあることはお前のこと
いつか きっとお前の元に戻るから 一生懸命生きて 一緒に暮らすから
待っていてほしい これが俺の気持ち


「必需品」
ほうき ちりとり 椅子 机 どれも必要だから作られた
ナス キュウリ カボチャ どれも必要だから作られた
たみやゆうすけ さて俺は 必要だから作られたのかな?

「なりたい」
心がこわれるほど 苦しくて
やさしい言葉をかけてくれる人 捜したけれど どこにもいない
ふと思う
捜すような人間やめて やさしい言葉をかけられる そんな人間になりたい

「内観」
内観なんてばからしい 一日中壁に向かって親のことを考える
こんなことで良くなるものか 人間が変わるものか
おれは おれだ 
でもなぜか
母のことを思うと涙が止まらない この気持ちはなんだろう

「雨のふる日は」
雨の降る日は 気分が沈む 気分が沈むと 楽しくない
楽しくないと 心が冷える 心が冷えると 口数が減る
考えると 自分の間違いに気付く 間違いに気付くと 心が晴れる
心が晴れれば 楽しくなる 楽しくなれば 優しくなれる
優しくなれたら それがいい 雨のふる日は優しくなれる


  詩集「雨のふる日はやさしくなれる」(平凡社)は、千葉県八街(やちまた)少年院の少年たちの、こころの声をあつめた詩集です。
  「暴走」をつづけてきた、つづけるしかすべがなかった少年たちが、静寂のなかで、はじめて自分と向き合い、もどかしくも言葉で生きる意味をさぐろうとしています。
  こういう少年たちを、抱きしめて、つつみこんでやれなかった、親や社会とは、いったい何なんだろうと考えさせられます。