2012年2月23日木曜日

乱読のすすめ46-新自由主義の犯罪










   さいきん、また新自由主義が跋扈(ばっこ)しています。
   新自由主義とは、市場原理にもとづき、資本の自由を最大化しようというもので、人間よりも企業のもうけを大事にする考え方です。「小さな政府」論(官から民へ、公務員削減、規制緩和万能論)などもその一環です。貧富の格差を広げ、どん欲なマネー資本主義がリーマン・ショックを引きおこしたことで、新自由主義批判が強まりました。
   そういう気分のなかで誕生した民主党政権でしたが、野田内閣は新自由主義の方向にもどってしまいました。このブログでとりあげたファシズムやポピュリズムの根底にも、新自由主義復活のうごきがあります。

   本屋さんにも、ふたたび新自由主義礼賛書が並びはじめました。
   「もし小泉進次郎がフリードマンの『資本主義と自由』を読んだら」(原作、池田信夫、日経BP社)。2015年に小泉ジュニアの進次郎くんが総理になり、財政はたんした日本を救おうと、お父さんの意思をついで新自由主義「改革」をすすめるというマンガです。
   大増税したうえに、公的な社会保障もやめてしまう、夢も希望もない話で、新自由主義の浅薄さがよく出ています。「竹中平蔵」さんや、大阪の「橋下」さんが閣僚の一員として小泉ジュニアに協力したり、不毛の改革を「若者、世代革命」とすり替えたりと、ポピュリズムと新自由主義との関係がリアルに描かれています。問題だらけですが、マンガなのでとにかくわかりやすい。科学的社会主義の陣営も、むずかしい本だけでなく、この際、マンガの解説書が一冊くらいあってもいいのではないかとおもいました。










   その点、同じ、新自由主義礼賛書でも、「新自由主義の復権」(八代尚宏、中公新書)は、情けない。自民党の安倍、福田内閣のときに政府の経済財政諮問会議議員をつとめた八代さん。数年前、国会の参考人質疑で、八代さんに新自由主義について質問したこともありますが、私にはかれの主張が、たんなる企業論理の正当化としか聞こえませんでした。本書も、貧富の格差を拡大したのは新自由主義ではないとか、小泉改革はただしかったなど、正当化ばかり。少しくらい反省があってもよさそうなものだとおもいました。




   いずれにせよ、新自由主義とのたたかいはまったく終わっていない。むしろ決戦はこれからです。

   あらためて、「新自由主義の犯罪」(ダイモンミキシ著、新日本出版社)などを参考に、理論武装しておくことも大切ではないでしょうか。