2011年9月28日水曜日

乱読のすすめ8―大江健三郎「読む人間」




   本を読むことは、一人ひとりの人生にとっては、どういう意味をもつのでしょうか。

   大江健三郎さんは近著「読む人間」(集英社文庫)のなかで、つぎのように語っています。


   「自分にとって本のネットワークがある。こういう人たちの本を読んで影響をうけ生きてきたんだ、という見取り図が生きてゆくうちにしだいにできてゆく。それが持続的に本を読むことですが、もう私の年齢になると、自分が生きてきたのは、なによりこれらの本と一緒に生きてきたんだということがはっきりしてきます。その上で、この程度の本と質だったかと感じる。ひいては自分が生きてきたのはこの程度の一生だったのかという気持ちにもなりますが、同時に、確かにこういう人生だったと、懐かしい気持ちも私は抱いています」